เข้าสู่ระบบあの日以降、琴音ちゃんだけでなくきらりさんも頻繁に家を訪れるようになった。
賑やかになったのはいいんだけど、そこはかとなく漂う緊張感がけっこう居心地悪い。
まぁ夏休みが終わればみんな忙しくなるから落ち着くだろう。
そう考えて2人を適当にあしらっているうちに夏休みも終わってしまい、学校が始まると生徒会長としての仕事が山積している。たいていは普段の通常業務で地味なものがほとんどだけど、その地味な事こそ何よりも大事だったりする。
会社であれ学校であれ、大抵はそういった地味な仕事の上に業務は成り立っているもんだ。
派手で生徒ウケするような行事だって、こんな日々の積み重ねをおろそかにしないからこそつつがなくスムーズに進行できるのだ。
そして2学期と言えばその生徒ウケ行事の中でも筆頭にあがる文化祭が開催される。
11月に開催されるので夏休み明けの時点で残された準備期間は2か月。
その期間でいったい何ができるのか。
「生徒会でも何かやろう!」ホワイトボードにでかでかと『生徒会参加行事提案会議』と書いて生徒会メンバーに問いかける。
副会長谷村先輩、書記の睦美先輩、会計の佳乃先輩、庶務の文香。
一番最初に手を挙げたのは文香だった。いつも先輩方に遠慮して控えめな文香にしては意外だ。
「ミスコン!もちろん水着審査ありの!」
ほほぅ。なかなかいい案じゃないですか。11月に水着って寒くないかな?
「くふふ。ゆきちゃんの水着……」
ちょっと待てーい!
「ナニソレわたしも参加する予定なの?」
「「「「もちろん」」」」
こやつら……。
会長をおもちゃにしてはいけません。
「他に案はなーい?」
笑顔で次を促してみる。
「………」
………&hell
学校での放送の効果があったのか、近所での噂もすっかり落ち着いた。 そしてあの事件が起きて以降、変化したことがある。 姉妹たちの距離がやたらと近くなったような気がするのだ。 いや、以前から物理的な距離はけっこう近かった自覚があるんだけど、今は何と言うか、心理的な距離というかやたらと懐かれているというか? 特にひよりが顕著だ。 受験も終わって肩の荷が下りたので、また一緒にダンスのレッスンを再開しているんだけど、それ以外の時間でも何かにつけて一緒にいる。 どこに行くのにも、例えばその日の夕飯の買出しなんかにも一緒についてきて、わたしの周りを嬉しそうに飛び跳ねている。 他の姉たちも、わたしと行動を共にする頻度が増えたような気がする。 そして、以前のようにきらりさんや琴音ちゃんが遊びに来てもあまり警戒しなくなった。 なんだか余裕のようなものが見える。2人の言うことにいちいち反応せず、さらりと受け流している姿には貫禄すら感じるくらい。 さすがに抱き着いたりした時には追い出そうとするけど。 みんなの意識にどういった変化があったのかは分からないけど、以前より圧倒的に過ごしやすくなったので、これはこれで良しとしよう。 そしてダンスに打ち込むようになったひよりはその実力をめきめきとつけていき、今や基本的な動きはほぼできている。 これなら何曲か完全にマスターしてもらって、一緒に踊ることだってできるだろう。 ということで基礎練習はそろそろおしまいにして、わたしの曲をベースに実際通しで踊ってみることにしたんだけど、思ったよりついてくることが出来ていて驚いた。わたしの練習をしっかり見て覚えたんだね。 これならもう少し練習するだけで、全然人に見せていいものになると思う。 となれば善は急げ。「ひより、わたしと一緒にリスナーさんの前で踊ってみない?」 わたしの提案に目を丸くするひより。「そんな、わたしなんてまだまだ早くない? やっと1曲通して踊れるようになったばかりなのに」
休み明け、学校に登校する道すがらですでに予兆はあった。ひよりとあか姉、3人で歩いているとあからさまに感じる視線。 同じ学園の生徒だけでなく、近所の主婦やお店の人、果ては小学生までじっとこちらを見てくるくらいだから、相当広まっていると考えたほうがよさそうだな。 学校が近づくにつれて視線はさらに増え、そこかしこでヒソヒソ話も。なんか悪いことした人みたい。 視線の集中砲火を潜り抜け、ようやくたどり着いた教室。だけどそこは安住の地などではなかった。 教室に入るなり押し寄せる群衆。口々に発せられる質問の数々。 あーもーうっせー!「とりあえずみんな落ち着こう! 何言ってるかさっぱり分かんないよ」 動体視力は人並外れてるから、怒涛の勢いで流れるコメントを拾うことができるけど、耳まで同じというわけにはいかないんだよ。聖徳太子にはなれません。 とりあえずみんなを代表して文香が質問してきた。さすが副会長。身分が人を変えると言うけど、文香も副会長になってからずいぶんと頼もしくなったもんだ。あれだけ引っ込み思案だったのに。「ゆきちゃんの家に強盗が入ったって街中の噂になってるけど本当なの!?」 うん、やっぱりその話題だよね。知ってた。でもわずか2日で街中とか。 いくら普段事件なんて起きない平和な田舎町とはいえ噂が広まるの早すぎない?「一応ほんとのことだけど、どうしてみんながそのことを知ってるのかが疑問なんだけど」 それに応えてくれたのが木野村君。まさか……。「俺は従弟に聞いた。同じ道場に通ってた兄弟弟子なんだろ?」 そう、木野村君は事件当日に来てくれた松田巡査の従弟。「うん、当日うちに来てくれたのも松田さんだったしね。それでどこまで聞いているの?」 仮にも警察官なんだからいくら従弟とはいえ、詳細には話していないだろう。「けっこう詳しく教えてくれたぜ。広沢が強盗を半殺しにして病院送りにしたらしいな」 松田ぁぁ! 警察官が事件内容を一般人にペラペ
姉妹達の献身的な介護のおかげもあって、その日の夜にはお風呂に浸かりながら自分でマッサージできる程度には痛みも引いていた。 明日の学校に響くことがないよう、しっかり念入りに自分の手の届く範囲をもみほぐしていく。 けっこうな痛みが走るけど、それが気持ち良かったりもする。 腕の傷は縫うまでもない薄皮一枚の浅いものだったので、お風呂上りに消毒だけしておけば問題ない。 湯船につかり、手足を伸ばして筋肉のコリをほぐしていく。「ふへぇ~」 お湯の温かさと痛気持ちいい感覚で思わず間の抜けた声が漏れる。 天井からポタリと水滴がひとつ。小さな滴が水面に波紋を作り、それは隅々にまで広がっていく。 心無い男が起こした事件のおかげで、わたしの周辺にも波紋が広がった。 本当はまだもう少し隠しておくつもりだった脳機能障害の話。 パトカーや救急車が集まってきてたから、事件が近隣や学校で噂になったりしないだろうか。 みんなはもう平気だと言ってはいたけど、心の中にはあの事件の恐怖が刻まれてしまっているだろう。 恐怖という感情はそんな簡単に薄らいでいくものじゃない。 幸いみんなはわたしの事を受け入れてくれた。だったらわたしがみんなの心に気を配り、少しでもケアできるようにしていかないと。 より姉にはもっと自分の事を考えろと怒られてしまったけど、やっぱりみんなの事を優先的に考えてしまう。 だってそれがわたしの使命なんだから。 物心ついたころから背負ってきた使命はそう簡単に曲げられるものでもない。 もし曲げてしまったらわたしはわたしでいられるのだろうか。みんなに幸せを届けられないわたしに存在価値なんてあるんだろうか。 どうやらわたしの心の中にまで波紋は広がっているみたい。今までこんなこと考えたこともなかったのに。 ロクなことを考えそうにないので、さっさとお風呂から上がってしまおう。 そう考えて立ち上がろうとした時、お風呂場の扉が音を立てて開いた。「え?」 素っ頓狂
病院から帰ったころにはすっかり深夜だった。 家族のみんなはもう就寝してしまっている。よかった。 正直既に全身が痛い。やはり全力で動いたことのツケがしっかりと回ってきている。 歩くだけでも辛い今の状態を、誰にも見られずにすむのはありがたい。 なんとか自分の部屋にたどり着き、着替えもせずそのままベッドに倒れこんだ。 目を閉じると浮かぶのは姉妹たちの怯えた表情。まさかわたしがあんな顔をさせることになってしまうなんてね。 自嘲気味に笑いながら、自分の覚悟を決める。 明日、みんなに伝えなきゃ。 翌朝、痛む体をどうにか引きずり、朝食を作ろうとリビングに下りていく。階段を一段下りるたび、全身を駆け巡る痛み。 どうにか下の階にたどりつき、キッチンを覗くとお母さんがすでに朝食を作っていた。 家族の前で痛そうな姿を見せるわけにはいかないので、姿勢を正し痛みをこらえてお母さんに近付く。「どうしたの? 朝食ならわたしが作るのに」 お母さんは何も言わずにちらりとわたしを見ただけで朝食を作り続ける。「お母さん?」「わたしが何も気づかないとでも思っているのかしら? 手足を動かすだけでも辛いんでしょう。部屋に戻るのもキツイだろうからそこのソファーで横になっていなさい」 そうか。全部を知ってるお母さんには強がっても意味ないよね。ちょっと怒ってる?「ごめんなさい、ありがとう」 素直に厚意を受け取ってソファーに転がる。そこまでの一連の動作だけでもきつかったけど、横になってしまえば随分と楽になった。 昨日は遅くなったのでまだ少し眠い。気だるさを感じたわたしは横になったまま目を閉じた。「ゆき、朝ごはんができたわよ」 お母さんに揺り起こされて気が付いた。いつの間にか眠っていたらしい。やはりまだ疲労が抜けていないのかもしれない。 どうにか起き上がり、テーブルの方を見て驚いた。 姉妹たちが全員揃ってもう席についている。お母さんが起こしに
心肺停止? でも今でもゆきは元気にしてるじゃねーか。「ゆきは一度死んでいるのよ」 そんな……。ゆきの姿を思い浮かべる。あいつが一度死んだ? その事実がまだうまく呑み込めない。 他の姉妹を見ても、みんなショックを受けて固まってしまっている。 今の元気なゆきの姿からは想像もつかない。ひとつだけ心当たりがあることと言えば……。「あなた達、4分間の壁って聞いたことある?」 突然母さんが質問を振ってきた。全員が首を横に振る。「そう。これから何かの役に立つこともあるかもしれないからよく覚えておいて。人間はね、心肺停止から3分で生存率が50%に下がる。 そして4分を過ぎると高い確率で脳に障害が残ったり、下手をすると植物状態になったりするのよ」 脳の障害……。まさか!「あの子の心肺停止の時間は6分。奇跡的に息を吹き返したけど、なんらかの障害が残ることは間違いないとまで言われたわ。 幸い、言語や行動に大きな障害が残ることはなかった。それでもあの子の世界から全ての色は消えてしまった」 やっぱり……。ゆきの目はそんな事情で……。 ひとり知らされていなかったひよりが驚いた表情のまま硬直している。その気持ちは分かる。あたしだって最初に聞かされた時はなんて声をかけていいか分かんなかったもんな。「ひより以外はみんな聞いていたみたいね。ひより。気持ちをしっかり持って。ゆきの目はね、全ての色が見えないの。 普通は色覚障害というと光の三原色のうちひとつかふたつが見えないだけでなんらかの色は見えるのだけど、ゆきの場合は全色盲といってすべての色が見えず、完全に白と黒しかない世界に住んでいるのよ」 驚きのあまり固まっていたひよりが目に涙をいっぱいに溜めながら声を上げた。「でも! ゆきちゃんは普通に生活してたよ? 信号の色もちゃんとわかってるもん!」「あの子の本棚見たことある? その中に色彩図
パトカーと救急車が家の前に停まり、警察官や救急隊員が忙しなく動き回っているせいで近所の人の目をひいてしまい、外はにわかに野次馬でごった返すほどに注目されてしまった。 強盗が入ったなんて一大事だもんね。 みんなそれぞれ警察から事情聴取を受け、最後にわたしの番が回ってきた。 他の姉妹には聞かれたくないので玄関先に移動して聴取を受けることにした。担架に乗せられ、運ばれていく男の姿が見えた。「いてーよー。なんなんだ、あの女ー。化け物かよ」 やかましい。誰が化け物だ。それだけ話せる元気があるなら十分だろ。 もっと恐ろしい目に遭わせてやればよかったと、背中がチリっとするのを感じた。「やれやれ、ゆきさんの実力は知っているけれど随分な無茶をしたね」 わたしの気配を察したのか気安い感じで話しかけてくる警察官。 担当に当たってくれた警察官は顔見知り。同じ柔道場に通う松田巡査だった。 事情聴取ということだったのでわたしが帰ってから見聞きしたことを簡単に説明した。「なるほどね。事情は大体わかったよ。犯人は強盗未遂ってことで厳罰を食らうだろうけど、その前に治療してやんないとだ」 苦笑交じりに冗談っぽく語る松田さん。普通ならわたしが過剰防衛に問われてもおかしくない。 脱臼した肩は元に戻しておいてやったけど。 戻すときも痛いってうるさかったな。「松田さん、強盗未遂じゃないです。強盗致傷、もしくは強殺未遂ですよ」 そう言ってまだ血がついたままの左腕を見せた。「なるほど」 そう言って傷口をじっと見つめる松田さん。やがてため息をこぼしながらやれやれと言った様子。「ゆきさん、これ絶対に狙ってやったでしょ。ま、これならちゃんと正当防衛が成り立つか。それにしても薄皮一枚だけ切らせるとかどんな動体視力してんだか。一応写真も撮るし、病院に行って治療も受けてもらわないといけないよ。診断書はもらっておいてね」 すっかり血も止まり、凝固しかけているのを見て心底感心したようだ。「承